29歳からのスリランカ

仏教・オーガニック農業・日常のこと…を等身大目線で綴った人生初ブログ。

バナナをめぐる攻防

それは、赴任地に到着して数ヶ月経った頃の夜。

 

弊社ファームマネージャー(FM)がさらっと放った言葉により、事は始まったのでした。

 

FM「CHISA, 象のパトロールに行くぞ」

 

(象?・・・ですと???)

 

FM「セキュリティ(警備員)から、野生の象が我々のセンター内に入ったという報告があった。バナナを守るために、すぐに見回りにいかないといけない」

CHISA「・・・そうですか。それは、セキュリティの仕事ではないのですか?」

FM「セキュリティは警備小屋(※彼らが滞在している、センター入口にある小屋)から動けないと言っている。もし彼らが警備小屋を離れると、象がそのすきに警備小屋を荒らしに来るかもしれないそうだ」

CHISA「(セキュリティいい加減なこと言わず、仕事しろよ怒)・・・あの、私、象には詳しくないので、ほかの現地スタッフのほうがいいと思うのですが・・・」

FM「ほかのスタッフはすでに家に帰っている。心配するな。私と、象に詳しいスタッフCがいる。それとCHISAで動けば大丈夫」

CHISA「(スタッフ仕事してよ泣)・・・そ、そうですか、わかりました」

 

ということで、クラッカーと呼ばれる、爆竹のような音で動物を驚かすアイテムと懐中電灯をたよりに、夜9時、3人でバナナを守りにいくことになったのでした。

 

↓ちなみに、これが象のイメージ

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これは「象の孤児院」のまだ小象さんなので、実際はもっと大きい”ぞう”(洒落にもならない洒落)

さて、 FMから教えられたパトロール中の手順は、こんな感じでした。

①バナナ農園周辺の道を、まず象の動きに詳しいスタッフCが偵察

②象がいなければ、FMがスタッフCのいった方向に進む。もし象がいた場合は、FMがクラッカーを鳴らして象を驚かせる。

③CHISAは一番最後から、背後から象が来ないことを確認しながら進む(象は群れで移動することもあるため)

 

FM「絶対に手順を守ること。でないと死ぬ危険性がある」

と脅され、恐る恐る暗闇をバナナに向かって歩きます。

 

(というより、バナナより人命のほうが大事なのでは・・・)

 

スタッフC「ほら、ここに新しい足跡がある。象は近いぞ」

FM「いや、まてよ。この足跡の向きからすると、目的はバナナではなく水浴びかもしれない。一度近くの小川の様子を見てみよう」

 

と、小川にターゲットを変えて進む3人。

 

スタッフC「見て。ココナッツの木の枝が散乱している」

FM「本当だ。象がなぎ倒して進んだに違いない。よし、私はあっちのココナッツ畑の方向をみてくる」

スタッフC「じゃ、私はこっちの畑を」

 

っておーい!!!!!手順と違う~~~!!!!

(しかも、どうすればいいの、私~!!!!!)

 

仕方がないので、ぼーっと暗闇の向こうの川のほうを眺めていると・・・

 

いるじゃん、象!こっちみてるよー!!!!!

 

と、まさかの第一発見者、このわたくしなのでした。

 

CHISA「あのー、川にいます、象!」

FM「なんだって?」

スタッフC「よし、クラッカーを鳴らそう」

 

となんとか、かんとか、こちらが慌てている間に、ぞうは川の向こうの暗闇に隠れたみたいでした。待つこと数十分。象が現れる気配がないので、その日は退散することに。

 

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後日。

私がコロンボに滞在中に、象はセキュリティの目をかいくぐり、夜中バナナをたらふく食べて帰ったそうです。翌朝、なぎ倒された無残なバナナの木の残骸が・・・(敗北)

 

後日の後日。

通常、農場の周りには、象よけの電熱線がはってあるのですが、象も賢い。

電熱線に電気を送るジェネレーターを探し当て、それをアタックするという行為に(!)。

これで無効と化した電熱線をさらりとかいくぐり、バナナ(しかもオーガニック)食べ放題にいたっています・・・(完敗)

 

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電熱線システムがなかった昔は、象の見張り役の村人が、木の上につくった見張り小屋で象を監視し、象を発見後に、それはそれは上手に象を畑から追い払ったそうなのですが、現在ではそれをできる村人も少なくなってきています。

人間がシステムを近代化すれば、象も当然学習してそれに対応するわけで。

 

また、田舎にも押し寄せる近年の村開発によって、象も、彼らが独自にもっていた従来の移動ルートから外れることを余儀なくされるそう。それで、迷い子になる小象さんたちが、写真の孤児院に行くことになっているそうな。

 

どういう風に象と一緒に生きていくのか・・・うーん、考えさせられますね。

 

それでは、今日もよい一日を。

合掌