バナナをめぐる攻防
それは、赴任地に到着して数ヶ月経った頃の夜。
弊社ファームマネージャー(FM)がさらっと放った言葉により、事は始まったのでした。
FM「CHISA, 象のパトロールに行くぞ」
(象?・・・ですと???)
FM「セキュリティ(警備員)から、野生の象が我々のセンター内に入ったという報告があった。バナナを守るために、すぐに見回りにいかないといけない」
CHISA「・・・そうですか。それは、セキュリティの仕事ではないのですか?」
FM「セキュリティは警備小屋(※彼らが滞在している、センター入口にある小屋)から動けないと言っている。もし彼らが警備小屋を離れると、象がそのすきに警備小屋を荒らしに来るかもしれないそうだ」
CHISA「(セキュリティいい加減なこと言わず、仕事しろよ怒)・・・あの、私、象には詳しくないので、ほかの現地スタッフのほうがいいと思うのですが・・・」
FM「ほかのスタッフはすでに家に帰っている。心配するな。私と、象に詳しいスタッフCがいる。それとCHISAで動けば大丈夫」
CHISA「(スタッフ仕事してよ泣)・・・そ、そうですか、わかりました」
ということで、クラッカーと呼ばれる、爆竹のような音で動物を驚かすアイテムと懐中電灯をたよりに、夜9時、3人でバナナを守りにいくことになったのでした。
↓ちなみに、これが象のイメージ
さて、 FMから教えられたパトロール中の手順は、こんな感じでした。
①バナナ農園周辺の道を、まず象の動きに詳しいスタッフCが偵察
②象がいなければ、FMがスタッフCのいった方向に進む。もし象がいた場合は、FMがクラッカーを鳴らして象を驚かせる。
③CHISAは一番最後から、背後から象が来ないことを確認しながら進む(象は群れで移動することもあるため)
FM「絶対に手順を守ること。でないと死ぬ危険性がある」
と脅され、恐る恐る暗闇をバナナに向かって歩きます。
(というより、バナナより人命のほうが大事なのでは・・・)
スタッフC「ほら、ここに新しい足跡がある。象は近いぞ」
FM「いや、まてよ。この足跡の向きからすると、目的はバナナではなく水浴びかもしれない。一度近くの小川の様子を見てみよう」
と、小川にターゲットを変えて進む3人。
スタッフC「見て。ココナッツの木の枝が散乱している」
FM「本当だ。象がなぎ倒して進んだに違いない。よし、私はあっちのココナッツ畑の方向をみてくる」
スタッフC「じゃ、私はこっちの畑を」
っておーい!!!!!手順と違う~~~!!!!
(しかも、どうすればいいの、私~!!!!!)
仕方がないので、ぼーっと暗闇の向こうの川のほうを眺めていると・・・
いるじゃん、象!こっちみてるよー!!!!!
と、まさかの第一発見者、このわたくしなのでした。
CHISA「あのー、川にいます、象!」
FM「なんだって?」
スタッフC「よし、クラッカーを鳴らそう」
となんとか、かんとか、こちらが慌てている間に、ぞうは川の向こうの暗闇に隠れたみたいでした。待つこと数十分。象が現れる気配がないので、その日は退散することに。
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後日。
私がコロンボに滞在中に、象はセキュリティの目をかいくぐり、夜中バナナをたらふく食べて帰ったそうです。翌朝、なぎ倒された無残なバナナの木の残骸が・・・(敗北)
後日の後日。
通常、農場の周りには、象よけの電熱線がはってあるのですが、象も賢い。
電熱線に電気を送るジェネレーターを探し当て、それをアタックするという行為に(!)。
これで無効と化した電熱線をさらりとかいくぐり、バナナ(しかもオーガニック)食べ放題にいたっています・・・(完敗)
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電熱線システムがなかった昔は、象の見張り役の村人が、木の上につくった見張り小屋で象を監視し、象を発見後に、それはそれは上手に象を畑から追い払ったそうなのですが、現在ではそれをできる村人も少なくなってきています。
人間がシステムを近代化すれば、象も当然学習してそれに対応するわけで。
また、田舎にも押し寄せる近年の村開発によって、象も、彼らが独自にもっていた従来の移動ルートから外れることを余儀なくされるそう。それで、迷い子になる小象さんたちが、写真の孤児院に行くことになっているそうな。
どういう風に象と一緒に生きていくのか・・・うーん、考えさせられますね。
それでは、今日もよい一日を。
合掌